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私のフェルデンクライス体験(出会いと発見・その4)

― 出会いと発見 その4 ―


レッスンを記述すること

[日本フェルデンクライス協会のNewsLetter No.20 に掲載した一文に若干手を加えました]

フェルデンクライス・メソッドを指導する方ににとって、個々のATMレッスンをいかに記述するかということはかなり重要な問題ではないかと思います。また、フェルデンクライスのレッスンを体験した方が後でそのレッスンを復習するために、レッスンの流れを記録しておきたいと思われる方も多いのではないでしょうか。そんなもの紙の上に記述なんかしないで、頭の中に記述すればいいという記憶力抜群の方にとっては無縁かもしれませんが、普通に凡人である私たちにとっては、なんらかの形でメモを作成することがもっとも手っ取り早い方法になるかと思います。

この連載第1回で述べたように、私自身はモーシェの著書 "Awareness Through Movment"(邦訳「フェルデンクライス身体訓練法」)を通じて初めてフェルデンクライス・メソッドを体験しました。同書所収のレッスンと"TheMaster Moves"(邦訳「心をひらく体のレッスン」)所収のレッスンは何度も繰り返し体験しましたから、これらは脳内記述だけでほぼ充分になりました。しかし、これだけではせいぜい20種余のATMレッスンにしかなりません。

当時スタートしたフェルデンクライス研究会FCJの講習会には多数の参加者が殺到するようになり、可能な限り多種多様なレッスンを準備しなくてはならなくなりました。ほかにナボンさんから受けたレッスンが全部で20種類ぐらいになったでしょうか。それにしても充分とは言えません。レッスン参加者は毎回同じレッスンではなく、可能な限り新しいレッスンを体験することが大切です。毎回新しいレッスンに挑戦して試行錯誤を繰り返すことこそがフェルデンクライスの本質的要素です。同じレッスンを毎回同じように繰り返したのでは単なる機械的な体操と変わらないものになってしまいます。
FCJ初期の記録を調べてみますと、演劇の仕事の片手間にしては信じられないぐらいの回数の講習会を開いています。毎週2日前後の割合で午後1時から6時まで、時には9時までというような時間帯で、1時間に1レッスン程度のペースで行っていましたから、レッスンの種類はいくらあっても追っつかない感じでした。

Feldenkrais Resourcesのことはみなさんご存じと思いますが、これは1983年にフェルデンクライス関係の資料を専門に取り扱う組織として生まれました。私がその存在を知ったのは1984年の夏でしたが、早速カタログを取り寄せました。今からみると粗末なもので僅か数ページのものでしたが、まるで宝の山を見つけたような興奮に駆られて、レッスン用のカセットテープとトランスクリプトを殆ど全部注文しました。まだインターネットなどという便利なものはない時代で、航空便で注文書を送り、品物は船便で受け取るという方法でした。

そうやってATMレッスンを数多く手に入れたわけですが、それを実際にレッスンの場で活用するには、簡潔にしかも分かりやすく記述したメモを作成する必要に迫られました。テープを聴きながら、活字を読みながら、自分で体験している分には楽しくて心地よくて、深い体験ができたときには心身ともに喜びを感じることができますが、それを人に伝えるためにはそれだけでは不十分でした。その頃にはナボンさんのレッスンを受けたこともあって、それらを含めて自分が体験したレッスンをどうやって他者に発信するかを考えたとき、それをどういう形で記述するかということが課題になりました。

実際にレッスンを受けているときは気持ちがよく体が動いて快い感覚を楽しむことができたとしても、いざ後でそれを思い出そうとすると、前後関係やバリエーションの細部が曖昧になっています。だからといって、後で記録するためにレッスンの最中に動きを記憶しようとして注意がそちらに移ると、レッスンで受けた身体感覚の余韻を充分に味わいたいのに、それを断ち切るようにして言語的にレッスンを分析することになります。右脳と左脳という分け方がありますが、フェルデンクライスのレッスンは、右脳の総合的なシステムで十二分に感受することが何よりも大事だと思います。それを充分深めないで、言葉で割り切ってしまうわけですから、なによりも貴重なものを取り逃してしまうことになってしまいます。

またレッスンの録音を忠実に言葉で記述したとしても、結果は実際のレッスンの体験とは相当にずれたものを感じました。動きのポイントがどこにあるのかがぼやけて、全体の構成が今一つはっきりしないものになるのです。そこで別のやり方をするようになりました。

そこで自分なりの書式で私なりの「レッスンテーブル」をつくることにしました。レッスンを構成する動きのバリエーションをピックアップし、それに1番から番号をつけます。ひとつのレッスンの番号は大体10から20までの間に収まりました。そして、バリエーションごとに、導入の姿勢と動きのディテール、および注意点などを記入します。必要ならばわたし自身の感想またはメモを付け加えます。一つのレッスンをA4版ルーズリーフの1枚(多くても一枚の両面)に収まる程度に整理し、一目で全体の構成が見渡せるようにしました。

こうしておけば、ざっと見るだけで、レッスンのテーマ、各バリエーションの意味、レッスンの進行上のポイントなどが手にとるように分かります。こういう書式にレッスンをまとめるにはそれなりの苦労が要りますが、ATMレッスンの構成を理解する上では非常に役立ちました。

その後、FPTPなどで実際のレッスンを種々体験することになり、ときどきレッスン後の短い休憩時に大急ぎでメモを作成したりしました。しかし、それではレッスンで受けた身体感覚の余韻を充分に味わいたいのに、それを断ち切るようにして言語的にレッスンを分析することになります。右脳と左脳という分け方がありますが、フェルデンクライスのレッスンは、右脳の総合的なシステムで十二分に感受することが何よりも大事だと思います。その体験を充分深めないで、言語的に割り切ってしまうわけですから、なによりも貴重なものを取り逃してしまうことになってしまいます。

それに気づいてから、レッスン直後のメモ作りはできるだけ行わないようになりました。その日帰宅してから、あるいは二三日経ってから、思い出せるものだけを記録するようにしました。記憶は確かに薄れていて、思い出せるものには限りがありますが、特徴的な動きのバリエーションを記録しているうちに、次第に前後関係が明らかになってきて、それまで闇の中に沈んでいたイメージが徐々に浮かび上がって鮮明になってきます。鎖の輪が一つ一つつながって、やがて一本の長い鎖が出来上がるような感じです。これは、実際にレッスンを受けている時と同様、いや、それ以上にスリリングな体験です。机に向かってノートをつくっている時にも、意図せずにイメージ練習をすることになります。必要とあれば、動きを実際に試してみることにもなります。

結果は実際のレッスンとは違ったものになっていることもありますが、こういうやり方を続けているうちに、自分の中からさまざまのイメージが生まれてくるようにもなり、新しいアイデアも浮かんでくるようになります。それまでは、教わったレッスンをできるだけ忠実に繰り返すことを重視していましたが、一つのレッスンに別の動きを取り入れたり、同じテーマに別の方法でアプローチしたりすることができるようになってきます。

こうなってくると、日常ふと目についた動きをヒントに、自分なりに新しいレッスンを考案することもできるようになり、それが楽しくて仕方がなくなります。スポーツや踊りの動きだけではなく、日常の人びとの何気ない立居振舞いの中にも、レッスンに取り上げることのできる動きはいくらでもあることに気づきます。

私のレッスンの記述法は、この紙面で実例を紹介する余裕はありませんが、いずれフェルデンクライス研究会FCJのホームページで「私のレッスンノート」として公開する予定にしています。全て言葉だけで記述した一見なにげないメモにしかすぎません。自分ではこれでよく分かるのですが、誰にも分かるというものではないかもしれません。絵を使って記録している方もいると思います。それも方法だと思いますが、私は絵心がないので諦めております。

少し余談になりますが、動きを客観的に記述する方法については、いくつか優れた方法があります。モダンダンスのラバンの方法は有名ですが、翻訳が出ていますので目に触れる機会もあろうかと思います。他にEshkol-WachmanのMovement Notation(運動記述法)というのもありますが、これはきわめて詳細緻密なもので、まるでオーケストラの楽譜のように動きの各要素を分解して表記する方法です。Noa Eshkolはフェルデンクライスの50種のレッスンをこの方法で記述した書物"50 Lessons by M. Feldenkrais"を出しています。これは独特の文法と記号を覚えなくては理解することができませんが、それの習得は、老後の余暇の楽しみにでもとっておこうかと思っています。(追記:Eshkolの本はJack Heggieによる英訳本があります)

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プロフィール

安井 武

Author:安井 武
フェルデンクライス研究会主宰
FCJ(Feldenkrais Club Japan)
演出家(劇団俳優座)
IFF 認定 Feldenkrais Practitioner

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